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2021.06.01

丸中先生コラム④「亜硝酸態窒素」について

Wellcareでは分子・細胞・動物レベルの基礎研究からヒトを対象とした臨床研究を通じて、人体の疾病発症を早期に予測できる因子の発見と疾病予防法開発を目指して研究を推進されている、医学博士 丸中良典先生の水と環境に関するコラムを5回にわたってご紹介してまいります。第4回は近年人体への影響が懸念されている「亜硝酸態(硝酸態)窒素」についてです。

身近に潜んでいる?

   

 亜硝酸態窒素と言われても多くの方がピンとこられないと思います。

亜硝酸態窒素(硝酸態窒素)は化学肥料や生活排水の中に含まれており、地下水の中に溶けこみます。その水が水道水源に使用されるため亜硝酸態窒素濃度は、0.04 mg/L 以下と定められていますが水道水の中にも入っています。

また、私たちが飲んでいるペットボトルの水にも含まれている物質です。

私たちの身体にどんな影響があるの?

 飲料水や食物の中に亜硝酸態窒素があると、私たちの血液中にも取り込まれます。血液中に亜硝酸態窒素が存在すると何が起こるのでしょうか?亜硝酸態窒素は血液中のヘモグロビンに作用します。(ヘモグロビンの赤い色はその中に含まれている鉄の色です。)

ヘモグロビンは肺で酸素と結合して、体の隅々まで酸素を運ぶという「酸素運搬機能」を持ち、私たちが生きて行く上で非常に重要な物質です。亜硝酸態窒素はヘモグロビン中の鉄に作用(2価の鉄を3価の鉄に)し、メトヘモグロビンという物質になります。メトヘモグロビンになりますと、酸素と結合することができなくなり、結果、酸素を体の隅々に運ぶことができなくなります。このような状態を「メトヘモグロビン血症」と呼び、チアノーゼの原因となります(唇が紫色になります)。重症の場合は、酸素不足に陥って、窒息と同じ状態になります。またメトヘモグロビン血症は乳幼児に起こり易いことも知られています。

がんの原因に?

 

 亜硝酸態窒素が遺伝子障害を引き起こし、多くの種類のがんの発生に関与していることが知られています。遺伝子が傷付くと本来その細胞が有している正常な機能を発揮できなくなり、また細胞増殖機能が正常に制御されずに限りなく細胞分裂を引き起こして増殖してしまいます。これがいわゆる「がん」と呼ばれるもので、「がん細胞」が発生してある程度の大きさになりますと、水素イオン(酸)を大量に産生することにより破骨細胞(骨を酸により破壊する細胞)と同じように正常細胞を死滅させます。この正常細胞を破壊して、がん細胞自らが増殖する場所を確保してさらに大きさを増して行きます。このように私達の体の中にある正常細胞の機能を妨げてしまい、また他の臓器に転移し、がん細胞が全身で増殖して体の色々な機能を低下させて、結果として死に至ってしまいます。乳がん、胃がん、腎がん、グリオーマ(髄膜腫:脳神経を覆う膜の腫瘍)、結腸がん、直腸がん、食道がん、甲状腺がんの発生に亜硝酸態窒素が関与しているという報告がなされています。

 酸素を体の隅々までに行き渡らせ、またがんの発生を少しでも少なくするために、できる限り亜硝酸態窒素の摂取量を少なくすることで、私達の体を健康に維持するよう努めましょう。

 

医学博士 丸中良典先生
一般財団法人 京都工場保健会代表理事・診療所長・総合医学研究所長
立命館大学総合科学技術研究機構 創薬科学研究センター チェアプロフェッサー
京都府立医科大学 名誉教授

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